ピンクリボンのこと 2017.11.21 その人の物語を知り、一人一人と向き合う。がん研究会有明病院乳腺センター長・大野真司先生にインタビュー

日本のがん医療を牽引する大野真司先生。ピンクリボンシンポジウム2017の講演後、大野先生にがん医療や患者さんへの思い、そしてピンクリボン活動に取り組まれる意義などを、モモが聞いてきました。

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モモ大野先生、今日の講演では
医療の展望や承認予定の最新薬の話など、
今後のがん医療についてのお話が
とても勉強になりました。

大野先生みなさん治療を受けていたり、
治療を終えて普段の生活されていたり、
がんの経験者、
サバイバーの方々が多いと思いましたので、
今日は未来の話に重点を置いてみました。

モモそうだったんですね。

大野先生は〝サバイバーシップ〟を
重視されていますが、
そこに至った背景を教えてください。

大野先生わかりました。
そうですね、昔はがんは、言い方は悪いですが、
切ってなんぼ〟みたいなところがありました。

そして患者さんについては、
入院中のことしか、考えられていなかったです。

モモどのくらい昔ですか?

大野先生2000年ころまででしょうか。

医療者が見ていたのは、
手術して、無事に退院するまで。
再発したら抗がん剤も入院してやっていた。

病院の中での患者さんの姿だけが
医療者の目に入っていたんです。

モモでも実際はそうじゃないですよね。

大野先生入院している時間というのは、
人生の中のほんのわずか。
あとはすべて社会の中で生活しています。

実は僕自身、
そういうことを気づくようになったのは、
体験者の方々と一緒に
活動するようになってからなんです。

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モモ活動というと?

大野先生がんになった人と一緒に、
小学校を回る活動をやっていました。

モモそれは小学校のお母さんたちに
乳がん検診を勧める活動ですか?

大野先生そうです。
男の私が、しこりの話をしても
心に響かないですから。

でも体験者に
あなたはどうやって見つかりましたか?
という質問をして
お風呂に入っていてコリッと触れた
とか話をすると、伝わり方が全然違うんです。

それで体験者の方と一緒に
活動するようになったのです。

モモその時になにかあったんですね。

大野先生体験者とお母さんたちのやりとりを
聞くことになるんですが、
それが初めて聞くことばかりで。

体験者がどんな思いで
がんと向き合っているかを知って、
その人の普段の生活や人生のことを
考えるようになったんです。

結局それが、海外で
サバイバーシップ〟と
捉えられていたものだったんです。

モモそれがきっかけだったんですね。

大野先生今、チーム医療に取り組んでいますが、
そこにもサバイバーシップが起因しています。

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モモどういうことですか?

大野先生チーム医療の勉強のために、
海外の論文などを片っ端から読みあさりました。

その中に、抗がん剤を受けている患者さんに
なにが辛いか」をヒアリングした
アンケート調査があったんですが、

モモ辛さって、大きく変わるものなんですか?

大野先生10年ごとで結果がまったく違っていたんです。

80年代は
副作用をはじめとした体の不調だったのですが、
薬が進歩した90年代は
不安や鬱など、心の辛さが出てきた。
2000年代に入ると、
家族や仕事のことへ辛さや心配が移っていったんです。

モモ辛さで変わってきた、と……。

大野先生そうなんです。
そして辛いことを、
なんとかしようというのが医療だとすると、
体の症状は主治医、
心の不安は看護師や心理士、
生活や家族のことはソーシャルワーカーや行政、
家の近くのかかりつけ医など、
自然と輪が広がっていきます。

モモなるほど、
それがチーム医療に繋がっていくんですね。

大野先生とにかく片っ端から論文を読んだり調べたり。
すると、あらゆるところに書かれていることが
あったんです。

目的は患者の満足」だと。

モモ患者の満足!

大野先生一人ひとりが違う。
家族だって、
独身の人、
子供が小さい人、
孫がいる人、
いろんな人がいる。

その人たちの満足を達成しようとしたら、
本当に一人ひとりに合わせて
治療を変えていかなくてはならない。

そういうことがチーム医療そのものですし、
そのためには、その人の生活に
入っていかないといけない。
それこそがサバイバーシップだったんです。

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モモ病気だけなく、人を診る、
ということですね。

大野先生そうですね。

モモ先生はピンクリボン活動に
主体的に関わっていただいていますが、
活動への思いをお聞かせください。

大野先生ピンクリボン活動は、歴史を考えると
70、80年代のアメリカで
乳がんで家族を失った人が、
同じように辛い思いをしないように
と始まったんですね。

決して、早期発見、早期治療だけが
ピンクリボン活動ではないんです。

モモそうだったんですね。

大野先生はい。
乳がんで苦しむことのない社会を作ろう
というのが、ピンクリボン活動の根幹です。

そのためには何が必要かというと、
僕は〝知ること〟だと考えています。

モモ知ること?

大野先生知らないから、
不安になったりするのであって、
知ると、それが行動に移っていく。

モモ正しい情報を伝えることですね!

大野先生その中のまず一つの大きなことが、検診の大切さ。
乳がんの場合は早期発見することで
生存率が上がっていくわけですから。

モモモモもそう思います。

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大野先生加えて、先ほどの講演でもお話ししましたように、
今は11人に一人が、がんにかかる時代。
がんの進行に関わらず、
どのステージで見つかったとしても、
心も痛むし、生活も痛む。

そういう人たちを、
社会としてサポートするためにも、
正しいことを知ってもらうことは大事だと思うのです。

モモがんとともに生きていく、というのが
今は普通の世の中になりつつありますもんね。

大野先生これからの医療は手術の方法も薬も、
どんどんよくなると思います。

今日のお話の補足になりますが、
その裏には、過去の臨床試験に協力した
海外の医師や患者さんの存在があります。

今では当たり前となった乳房温存の手術も、
昔は転移などの危険性が危惧されていました。
日本は1986年にアメリカの先生を招き、
初めて手術に成功しました。

温存が、切除を追い抜いたのが2013年。
状況によりますが、脇のリンパ節を残すことについても
数年の間に変わっていった。

みなさんには、
こういう医療の進歩を知っていただくとともに、
医療従事者の自分としては、
未来の医療に貢献できることを
残していきたいと考えています。

モモ大野先生の志、
モモはとってもうれしく思います。

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モモ患者さんと向き合う上で、
大切にしていることはあるんですか?

大野先生そうですね。
心がけているのは「泣いて笑ってもらう」ことですね。

モモ泣いて笑ってもらう、ですか?

大野先生抑えていたものが出てくると泣くのですが、
そうして初めて笑うことができるんですね。

不安だとか、不満だとか、
自分で抑えていたものを放出できると、
少なくとも一歩は前に進める。

モモなんかわかる気がします……。

大野先生医学の世界で「ナラティブ」という言葉があって。
これは、「その人の語り、物語」という意味で
使われます。

例えば抗がん剤治療を前にした患者さんがいて、
治療の前に、その人の物語を追っかけるんです。

その人のお母さんが
乳がんで亡くなって寂しい思いをしたから
自分も子どもには同じ思いをさせたくないとか、

お姉さんが抗がん剤治療で苦しい思いをしたから
治療に対する抵抗感があるとか、
それを医療者として、事前にキャッチしておくんです。

モモその人の物語を知る……。

大野先生普段の診療の中でキャッチできていると、
その患者さんには、どのタイミングでどんな風に
話せば良いか考えるようになる。

そして、それを知って話をすると、
抗がん剤治療を受けたい、
受けたくないという話になっても、
医療者も、その気持ちに共感できるわけです。

モモ医師が共感することで、
患者さんは泣いて、次に向かう準備ができるんですね。

大野先生そのことができていない医者は、
なんでこんなに効果があるのに受けないんだ」とか、
え、効果がないのに
 なんでこの治療法を受けたいって言うんだ

となっちゃう。
自分の意見と違うじゃないかって。

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モモコミュニケーションって大切ですね。

大野先生でも、
本当は受けるべき治療なのに
受けないことによって
再発率が高くなってしまうのは 良くないこと。

だけどその人がなんで受けたくない
ってことが理解できていると、
お話をするときに、話ぶりが変わりますよね。

まあ、そういう僕も、
以前は患者さんの気持ちがわからなくて
苦労しましたが。

モモえ、先生が?

大野先生はい。昔の僕は「だ・か・ら外来」です(笑)。

なんで患者さんが治療を受け入れてくれないのか
わからなくって、いつも「だ・か・ら!」って
何度も説明を繰り返していました。

モモ想像がつきません。

大野先生ある時、いつものように
だ・か・ら!
って言おうとしたんですけど、
どうしてですか?
って聞いてみたんです。

そうしたら、その患者さんは、
子供の卒業式と入学式があるから
入院や手術のタイミングをどうにかできないか、
って話されて。

モモ衝撃ですね……。

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大野先生ああ、僕が話をしている間、
この人はそんなことを考えていたのかって。
それからコロッと変わって、
聴くようになったんですね。

モモそうだったんですね。

先生、最後に
サバイバーの方へのメッセージをお願いします。

大野先生先ほどの話にも通じるのですが、
やはり正しい情報を知ることだと思うんです。

今は情報が氾濫していますから、そうすると
混乱もするし、間違った情報にも進んでいったりする。

モモインターネットの一長一短ですね。

大野先生間違った情報に進んでいかないためには、
まずは医療者と話し合うこと。

モモ医療者と信頼関係を作っていくことですね。

大野先生とりわけ乳がんは、
意思決定の場面が多い病気。

切除と温存、再建する、しない、
そして抗がん剤をどうするかなど、
選択肢がたくさんある。

モモ確かにそうですね。

大野先生最後には自分で意思決定をしなくちゃいけないので、
そのためには自分も勉強しながら、
医療者のサポートを受けて、
正しい選択をしていくことですね。

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モモ難しいことですけど、
それをサポートするのも、
ピンクリボンの活動の一つですね!

大野先生乳がんについて知らない人に伝えること、
そして乳がんになった人に正しい情報を伝えることも
ピンクリボン活動の大事な役割です。

なので、モモもお手伝いよろしくお願いしますよ!

モモはい、モモも頑張ります!

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